予定どおりに動かないことを前提に
Managing Unpredictable Availability
Web制作の現場では、社員だけでなくフリーランスや副業メンバーとチームを組む機会が増えています。専門性の高い人材を柔軟にアサインできる一方で、多くのマネージャーやディレクターが悩むのが「稼働が読めない」という問題です。
「昨日まで連絡が取れていたのに今日は返信がない」「急に本業が忙しくなってしまった」「想定より作業時間が確保できなかった」。こうした状況は、フリーランスや副業人材と仕事をする以上、決して珍しいことではありません。
しかし、この問題は相手を変えようとしても解決しません。本当に見直すべきなのは、チームの設計や進め方です。
この記事では、稼働が一定ではないメンバーと無理なく付き合いながら、チーム全体の生産性を高めるための考え方を紹介します。
目 次
- 稼働が読めないのは「当たり前」
- 管理しようとすると、かえってチームが疲弊する
- 稼働ではなく「状況」を見える化する
- タスクは細かく分割してリスクを減らす
- 返信速度と仕事の品質は別
- 余裕を持ったスケジュール設計
- 管理しないことと、放置することは違う
- まとめ
稼働が読めないのは「当たり前」
フリーランスや副業メンバーは、会社員とは働き方が異なります。担当している案件は一つではなく、本業や家庭、育児、介護など、それぞれ異なる事情を抱えていることも少なくありません。
そのため、「毎日9時から18時まで同じように稼働できる」という前提でマネジメントを行うと、現実とのギャップが生まれてしまいます。つまり、「毎日9時から18時まで同じように稼働できる」という前提で考えること自体が現実的ではないのです。
もちろん、納期を守ることや、必要なコミュニケーションを取ることはプロとしての責任です。しかし、毎日決まった時間に稼働できることと、責任を果たせることは同じではありません。
重要なのは、「いつ働くか」を管理することではなく、「納期までに成果を出せる状態になっているか」を確認することです。
まずは、「稼働には波がある」という前提を受け入れること。それが、フリーランスや副業メンバーと長く良い関係を築くための第一歩になります。
管理しようとすると、かえってチームが疲弊する
稼働が不安になると、多くのマネージャーは管理を強めようとします。
例えば、
- 毎日の作業報告を義務化する
- 稼働時間を細かく確認する
- 数時間返信がないだけで催促する
一見すると安心できる運用に思えますが、フリーランスや副業メンバーとの関係では、必ずしも良い結果につながるとは限りません。
また、管理項目が増えるほど、マネージャー自身も確認や催促に時間を取られ、本来注力すべき進行管理や品質管理に使える時間が減ってしまいます。
フリーランスチームでは、「管理を増やすこと」が安心につながるとは限りません。
むしろ、必要最低限のルールで運用できる仕組みを整えるほうが、お互いに負担が少なく、長く協力しやすいチームになります。
重要なのは、人を細かく管理することではなく、プロジェクトの状況が自然と把握できる仕組みをつくることです。
稼働ではなく「状況」を見える化する
重要なのは、「何時間働いたか」ではなく、「今どの状態なのか」をチーム全員が把握できることです。そのために役立つのが、タスク管理ツールによる進捗の見える化です。
例えば。
- 未着手
- 作業中
- レビュー待ち
- 修正中
- 完了
といったシンプルなステータスを用意するだけでも、進捗は十分把握できます。
レビュー待ちの有無
といった情報を簡単に共有するだけでも、マネージャーの不安は大きく減ります。
また、必要に応じて
- 現在対応している作業
- 作業が止まっている理由
- レビュー依頼の有無
などを共有できれば、チャットで何度も進捗確認をする必要も減ります。重要なのは、「報告するための報告」を増やさないことです。
誰でも必要なときに状況を確認できる環境があれば、メンバーは制作に集中でき、マネージャーも確認や催促に時間を取られません。
「人を管理する」のではなく、「プロジェクトの状況を共有する」。
この発想が、フリーランス中心のチームをスムーズに運営するための大きなポイントになります。
タスクは細かく分割してリスクを減らす
一つのタスクを「Webサイトのコーディング」のように大きな単位で任せてしまうと、その人の稼働が止まったときに、どこまで作業が進んでいるのか分かりにくくなります。
一方で、
- コーディング1ページ
- レスポンシブ対応
- アニメーション実装
- WordPress組み込み
というように細かく分けておけば、
- 途中で担当変更できる
- 進捗が把握しやすい
- 遅れを早く発見できる
というメリットがあります。
また、一つひとつのタスクが小さければ、「ここまでは完了している」「ここから先をお願いしたい」という判断もしやすくなります。
これは、メンバーを細かく管理するためではありません。
誰か一人の稼働状況に、プロジェクト全体が左右されないようにするためです。
フリーランスや副業メンバーなど、働く時間がそれぞれ異なるチームほど、個人の稼働ではなく、仕事そのものを分解しておくことが重要になります。
返信速度と仕事の品質は別
フリーランスや副業メンバーと仕事をしていると、「返信がない」という状況に不安を感じることがあります。しかし、返信が早いことと、仕事が早く進むことは必ずしも同じではありません。
例えば、制作に集中している数時間はチャットを確認せず、その後まとめて返信するという働き方もあります。
大切なのは、常にリアルタイムで連絡が取れることではなく、必要なタイミングで必要な情報が共有されることです。
もちろん、急ぎの確認や納期に関わる連絡には、あらかじめ「○時間以内に返信する」といったルールを決めておく必要があります。一方で、それ以外のやり取りまで「すぐに返信すること」を求めてしまうと、メンバーは制作を中断してチャットを確認しなければならなくなります。
それでは、自由な働き方を前提としたチームのメリットも薄れてしまいます。
「すぐに返信してもらう」のではなく、「返信がなくても、仕事が止まらない状態をつくる」。
そのために、前章で紹介したタスクの見える化や、必要な情報を共有しておく仕組みが重要になります。管理を減らすということは、ルールをなくすことではありません。
本当に必要なルールだけを残し、それ以外はメンバーに任せる。
そのくらいの距離感のほうが、フリーランスや副業メンバーとは長く付き合いやすいチームになります。
余裕を持ったスケジュール設計
稼働が読めないメンバーと仕事をするなら、スケジュールにもある程度の余裕を持たせておく必要があります。
「この日に作業が終わるはず」と、すべてを予定どおりに進む前提で組んでしまうと、誰か一人の稼働がずれただけで、プロジェクト全体が詰まってしまいます。
そこで、
- レビュー期間を確保する
- 修正期間を確保する
- 万が一の予備日を作る
といったバッファを、最初からスケジュールに組み込んでおきます。これは「遅れても大丈夫」という考え方ではありません。
予定どおりに進まない可能性を、最初から織り込んでおくということです。
余裕があれば、急な稼働変更があったときにも、すぐに誰かを催促したり、無理に作業を詰め込んだりする必要がありません。
結果として、メンバーも無理なく仕事に取り組めますし、マネージャーも余計な管理や調整に追われにくくなります。スケジュールに余白をつくることは、単なる納期対策ではありません。
人の稼働に波があることを前提に、チームが無理なく動き続けるための仕組みです。
管理しないことと、放置することは違う
ここまで「管理を減らす」という話をしてきましたが、これは「何もしなくていい」という意味ではありません。管理しないことと、放置することは別物です。
細かな稼働時間を確認したり、常に返信を求めたりする必要はありません。しかし、チームに所属している以上、何らかの形でプロジェクトや組織に貢献することは必要です。
※ ゲツコーギルドでも、メンバーの働き方を細かく管理することはありません
いつ働くのか、どれくらいの時間を使うのかといったことよりも、その人がチームに何をもたらしているのかを大切にしています。逆に言えば、所属しているだけで何も貢献していないのであれば、その所属には意味がありません。
名前だけメンバーとして残り続けるのではなく、実質的に活動していない場合は、戦力外として除籍することもあります。これは厳しく聞こえるかもしれません。しかし、組織は「所属している人が多ければ強くなる」ものではありません。
貢献する人が報われ、貢献したい人が集まる組織であること。
その状態を維持できなければ、やがて組織は衰退していきます。雇用関係があってもなくても、本質は同じです。社員だから守られる、フリーランスだから自由という単純な話ではありません。
それぞれができる範囲で価値を提供し、その貢献に対して適切な機会や報酬、信頼が返ってくる。そんな「貢献した人が得をする」関係をつくることが、持続するチームには必要です。
だからこそ、管理は最小限にする。その代わり、貢献にはきちんと向き合う。このバランスが、自由なチームを維持するためには欠かせません。
まとめ
フリーランスや副業メンバーと仕事をする以上、「稼働が読めない」という状況は避けられません。だからこそ、相手を変えようとするのではなく、チームの仕組みを変えることが重要です。
今回紹介したポイントをまとめると、次のとおりです。
- 稼働に波があることを前提に考える
- 人ではなく状況を見える化する
- タスクを細かく分割する
- 返信速度と成果を切り分けて評価する
- スケジュールには必ず余裕を持たせる
- 貢献にはしっかりと報いる
マネジメントとは、人をコントロールすることではありません。一人ひとりが異なる働き方でも成果を出せる環境を整えることこそ、本来の役割ではないでしょうか。
チームの規模が大きくなるほど、「人を管理する」ことよりも「仕組みを設計する」ことが重要になります。
ゲツコーギルドでは、Web制作やディレクション業務を通じて、クリエイティブチームのマネジメント、ディレクション、組織づくりをサポートをしています。ご依頼やご相談は、お気軽にご相談ください。
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作成日: 2024.10.15
更新日: 2026.08.08
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木村ロキ
江戸下町産。WEBプロデューサー兼CEO。東日本大震災をきっかけに、場所や時間を選ばないクリエイターの働き方を体現するべく、慣れ親しんだ東京を離れ、瀬戸内海の離島へと移住。またフリーランスの地位向上と理想的なweb制作集団を構築するために、女性制作ギルド 秘密結社キユリアス(Qrious)を立ち上げるほか、地方創生や地域活性化、クリエイターの育成や再生、再起に注力し、現在3つのクリエイティブ・ギルドと1つの再生プロジェクトを運営。ボーラーハットがトレードマーク。現在は離島から東京へと戻り、新たなステージを構築中。