終わらないのは、修正ではなく合意
Why Revision Requests Never End (And How to Stop Them)
「一旦これで進めましょう」と決まったはずのデザインに修正依頼。直して再提出したはずなのに、今度は別の視点から指摘が入って、気づけば、当初の見積もり金額では割に合わなくなっていて、スケジュールだけがジリジリと後ろに倒れていきます。
修正依頼が無限ループする案件には、担当者の相性や運の悪さでは説明できない、いくつかの共通したパターンがあります。今回は、ディレクターとして数々の「終わらない修正」に向き合ってきた経験から、その共通点と対処法を整理していきます。
目 次
読了目安: 約4分 / 約2,000字
修正が終わらない案件に共通する3つの原因
原因1:そもそも「ゴール」が合意されていない
修正が無限に続く案件のほとんどは、実は「デザインの良し悪し」で揉めているのではありません。何を良しとするかの基準、つまりゴールそのものが最初から合意できていないケースが大半です。
「かっこよく」「親しみやすく」といった抽象的な言葉だけで進めてしまうと、担当者の気分やその日の社内の空気によって、判断基準が毎回変わってしまいます。結果として、修正するたびに評価軸がずれ、いつまで経っても着地しません。つまり、ゴールポストが動いてしまっているのです。
原因2:修正の「入口」が曖昧
修正依頼を受け付ける窓口が明確に決まっていない案件も、無限ループに陥りやすくなります。担当者からの指摘、上長からの横槍、営業経由で聞いた現場の声。それぞれが別のタイミングでバラバラに届くと、前の修正で直した部分が、また別の理由で差し戻されるという事態が起こります。
一つの修正依頼の裏に、実は社内で複数の意見が並立しているケースは珍しくありません。この状態を放置したまま個別に対応し続けると、修正は永久に収束しません。
原因3:決裁者が修正のたびに変わる
最初の打ち合わせでは担当者レベルの意見で進んでいたのに、途中から上長や経営層が急に登場し、それまでの合意がひっくり返される。このパターンも、修正無限ループの典型です。
決裁者が固定されていない案件では、「誰の合意をもって完了とするか」という前提そのものが揺らいでいます。ここが曖昧なままでは、どれだけ修正を重ねても、最終的な着地点にはたどり着けません。
無限ループを止めるための対処法
ゴールを言葉ではなく、判断基準として合意する
「かっこよく」「親しみやすく」は極めて主観的で人によってイメージが異なります。具体的な判断基準に翻訳する作業がディレクターの役割です。たとえば「競合A社よりも硬い印象にしたい」「若年層よりも40代以上に信頼される見た目にしたい」といった、比較可能な言葉に置き換えることで、修正のたびに評価がぶれにくくなります。
修正依頼の窓口を一本化する
修正依頼は、必ず一つの窓口に集約してもらうよう最初に合意しておきます。社内で複数の意見が出た場合も、それをまとめた上で一つの修正リストとして届けてもらう形にすることで、同じ箇所に対する矛盾した指摘を防げます。
修正回数と範囲を、契約の言葉で明文化しておく
これは意見の分かれるところではあります。実際にゲツコーギルドでは、修正回数の制限は設けておりません。ただ、一般的には「軽微な修正は3回まで」「大幅な方向転換は別途見積もり」といった線引きを、契約や見積もり段階で明文化している制作会社も多いと思います。この線引きがないまま進んでしまうと、無限修正を止める理由をディレクター自身が持てなくなってしまうからですが、これについては制作会社はクリエイタ個人のポリシーなので、必須ではありません。
それでも修正が止まらない
上記の対処をしても修正が収束しない場合、多くは「デザインの問題」ではなく「意思決定プロセスの問題」に行き着きます。この場合は、デザインそのものを直すのではなく、一度立ち止まって「誰が、何を基準に、いつまでに決めるのか」を再確認する場を設けることが有効です。
修正を重ねることは、必ずしも品質を上げることにはつながりません。むしろ、デザイナーのモチベーションを下がると、中途半端に改悪されるショックがパフォーマンスを下げることになります。
ですので、合意形成のプロセスに立ち返ることのほうが、最終的な着地への近道になります。
まとめ
修正依頼が止まらない案件は、デザインの巧拙ではなく、ゴールの合意・窓口の一本化・決裁者の明確化という、進め方そのものに原因があることがほとんどです。修正のたびに疲弊するのではなく、まず「何が合意できていないのか」を見極めることが、ディレクターに求められる本当の役割だと思います。
もし今、終わりの見えない修正対応に心当たりがあるなら、進め方そのものを見直すタイミングかもしれません。ゲツコーギルドでは、修正フローの設計サポートに加えて、案件そのものの立て直しをディレクション業務として引き受けることもできます。ご相談ください。
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作成日: 2024.08.15
更新日: 2026.08.06
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木村ロキ
江戸下町産。WEBプロデューサー兼CEO。東日本大震災をきっかけに、場所や時間を選ばないクリエイターの働き方を体現するべく、慣れ親しんだ東京を離れ、瀬戸内海の離島へと移住。またフリーランスの地位向上と理想的なweb制作集団を構築するために、女性制作ギルド 秘密結社キユリアス(Qrious)を立ち上げるほか、地方創生や地域活性化、クリエイターの育成や再生、再起に注力し、現在3つのクリエイティブ・ギルドと1つの再生プロジェクトを運営。ボーラーハットがトレードマーク。現在は離島から東京へと戻り、新たなステージを構築中。