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見積もりで削ってはいけない工数

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安さの代償は、後で必ず返ってくる。

What Not to Cut in Your Estimate

見積もりを安く見せたり、クライアントの予算に合わせるために、工数を削って調整することがあります。しかし、削ってはいけない工数を削ってしまうと、後になって必ずしわ寄せが来ます。今回は、削ってはいけない工数と、削ってもいい工数の見分け方を解説します。


目 次

  1. なぜ工数を削りたくなるのか
  2. 絶対忘れてはいけない!見積もりの大原則
  3. 削ってはいけない工数と具体例
  4. 削ってもいい工数
  5. 工数を削って起きたトラブル
  6. 安さの理由をクライアントに説明する
  7. 工数を削る相談を受けたときの判断フロー
  8. まとめ

読了目安: 約7分 / 約3,500字


なぜ工数を削りたくなるのか

見積もりの場面では、他社との比較や予算の都合から、総額を下げてほしいという要望がよく出ます。ここで安易に工数を削ると、その場では通りやすくなります。しかし、その削り方が後の進行を左右します。

工数を削る判断は、必ず「何を削るか」とセットで考える必要があります。総額だけを見て一律に圧縮すると、案件の土台を支えている工程まで削ってしまうことがあります。特に、複数の見積もりを比較検討しているクライアントほど、総額の差に目が行きがちです。内訳の意味まで説明しないまま値引きに応じると、後になって工数の使い方に納得してもらえない事態にもつながります。

また、価格競争が激しい業界ほど、この傾向は強くなります。競合が極端に安い金額を提示してきた場合は注意が必要です。その金額がどの工程を削って成立しているのかを想像せずに、自社も同じ水準まで下げようとするのは危険です。相手がどこを削っているかわからない以上、自社まで同じリスクを背負う理由にはなりません。

絶対忘れてはいけない、見積もりの大原則

工数を削る話をする前に、確認しておきたい大前提があります。見積もり金額は、単なる商品の値札ではありません。デザイナーやコーダーが実際に費やす労力や時間、つまり人件費に対する対価です。

工数を削るということは、その分の作業時間そのものを削るということです。安くなった金額の裏側には、必ず誰かの労働時間の圧縮があります。この等価交換の関係を見失うと、危険な要望に応じてしまうことになります。「金額だけ下げて、中身は変えない」という、本来は成立しない要望です。

だからこそ、工数の削減を検討する際は、常に一つの視点に立ち返る必要があります。「その金額の分だけ、実際の作業時間も減らせるか」という視点です。この原則を忘れると、見積もりはただの値引き交渉になり、しわ寄せは現場に集中していきます。

削ってはいけない工数と具体例

削ってはいけない工数には、共通する特徴があります。それは、その工程を省くと、後工程での手戻りや、成果物の品質低下に直結するという点です。

見た目には削ってもわからない工程ほど、実は危険です。クライアントの目に触れない確認作業やテストの工程は、削ってもその場では誰も気づきません。しかし、公開後に不具合として表面化したとき、削った工数の何倍ものコストで対応することになります。

具体的には、以下のような工数が該当します。

要件確認・すり合わせの工数

要件を確認する工程を削ると、認識のズレに気づかないまま制作が進みます。ズレは初稿の段階で表面化し、大きな手戻りを生みます。ここを削ると、結果的に修正対応の工数が膨らみ、削った分以上のコストがかかります。

テスト・動作確認の工数(デバッグ)

複数のブラウザやデバイスでの動作確認を省くと、公開後に不具合が見つかるリスクが高まります。公開後の緊急対応は、通常の制作工程よりもコストが高くつきます。ここでの節約は、将来の大きな出費に変わりやすい部分です。

ドキュメント化・引き継ぎの工数

仕様や実装内容を記録する工程を削ると、後から改修する際に一から仕様を読み解く作業が発生します。この工数は、次の担当者や将来の自分自身に向けた投資です。ここを削ると、次の案件で確実に取り返しのつかない形で返ってきます。

想定外に対応するバッファ

進行中に必ず発生する、小さな想定外の出来事に対応するための余白です。バッファをゼロにして見積もると、その場の金額は下がります。しかし、実際の進行では必ずどこかに無理が生じ、結局は別の形でコストが発生します。

削ってもいい工数

一方で、削っても大きな影響が出にくい工数もあります。たとえば、複数案を並行して提案するデザイン案の数です。3案から1案に絞れば、その分の工数は明確に減らせます。

装飾的なアニメーションや、必須ではない演出要素も、削りやすい部分です。これらは体験の質を上げる要素ではありますが、なくても機能そのものは成立します。予算に応じて調整しやすい部分として扱えます。

ページ数そのものを減らすという選択肢もあります。すべてのページを均等に作り込む必要はありません。優先度の低いページは簡易的な構成に留めることで、全体の工数を無理なく圧縮できます。

こうした「削ってもいい工数」に共通するのは、削っても品質そのものには影響しないという点です。見栄えや選択肢の豊富さには影響しますが、サイトが正しく機能するかどうかには直結しません。この違いを理解しておくことが、削減の相談を受けた際の判断基準になります。

工数を削って起きたトラブル

実際に工数を削った案件では、いくつか共通したトラブルのパターンが見られます。

一つ目は、確認工程を削ったことによる品質低下です。テストや要件確認を省いた案件ほど、公開後に不具合や認識のズレが表面化しやすくなります。結果として、クレーム対応や緊急の修正対応に追われることになります。

二つ目は、削った工数のしわ寄せが、現場の残業や無償対応というかたちで吸収されてしまうことです。見積もり上は工数が減っていても、実際の作業量は変わらないことが多くあります。その差分は、誰かの労働時間で埋め合わせるしかありません。この状態が続くと、担当者の疲弊や離職につながることもあります。

三つ目は、当初の値引きが、結果的に追加費用というかたちで跳ね返ってくることです。削った工程が原因で発生した不具合や手戻りは、多くの場合「追加対応」として扱われます。当初の値引き分を上回るコストがかかることも珍しくありません。クライアントとの関係も、当初の値引きの印象より、後から発生した追加費用への不満の方が強く残ってしまいます。

こうしたトラブルの多くは、削減を判断した時点では見えていません。だからこそ、削る前にリスクを共有しておくことが重要になります。

安さの理由をクライアントに説明する

工数を削る相談を受けたときは、何を削るとどんなリスクが生じるかを、具体的に説明することが重要です。「ここを削ると、公開後の不具合対応が難しくなります」というように、削った先に起きうるリスクを伝えます。

金額だけを見て判断してもらうのではなく、削る工程と、その先のリスクをセットで提示します。そうすることで、クライアント自身が納得した上で判断できる状態を作れます。これは、後になって「そんなつもりではなかった」というトラブルを防ぐ意味でも重要な工程です。

説明の際は、金額の話だけで終わらせないことも大切です。削った部分が将来どのタイミングで影響を及ぼしうるかも添えておくと、クライアントの判断材料が増えます。「今は問題ないが、半年後の改修時にコストがかさむ可能性がある」といった伝え方は、単なる値引き交渉には見えません。リスク説明として受け取ってもらいやすくなります。

工数を削る相談を受けたときの判断フロー

すでに工数を削った状態で進行している案件でも、対応の余地はあります。進行の節目ごとに、削った工程が実際にどう影響しているかを見直し、必要であれば追加工数として改めて提案します。最初から全部を戻そうとするのではなく、影響が大きい部分から優先的に補っていく姿勢が現実的です。

新たに削減の相談を受けた際は、要望の規模に応じて対応を切り分けます。削減幅が全体の1割程度であれば、対応の範囲は絞りやすくなります。デザイン案の提案数や下層ページの作り込みといった、削ってもいい範囲の調整で足りることがほとんどです。一方、テストやドキュメント化にまで踏み込まないと届かない規模であれば、そのまま安易に応じるべきではありません。リスクを説明した上で、削減幅そのものを見直す相談に切り替えます。

まとめ

見積もりを安く見せるための工数削減は、削る場所を誤ると、後で必ず大きなコストとなって返ってきます。要件確認、テスト、ドキュメント化、バッファ。これらは見た目にはわかりにくいものの、削ってはいけない工数です。

一方で、デザイン案の数や装飾的な演出、優先度の低いページの作り込みは、削っても大きな影響が出にくい部分です。何を削るかを見極め、その理由をクライアントにきちんと説明することが、双方にとって納得のいく見積もりにつながります。

もし見積もりの調整で悩むことが多いなら、工数の切り分け方そのものを一度整理するタイミングかもしれません。ゲツコーギルドでは、Web制作やディレクション業務を含む、見積もり設計や提案のご相談はもちろん、プロジェクトの進行管理そのものを請け負うことも可能です。

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作成日: 2024.02.15

更新日: 2026.08.05

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木村ロキ

江戸下町産。WEBプロデューサー兼CEO。東日本大震災をきっかけに、場所や時間を選ばないクリエイターの働き方を体現するべく、慣れ親しんだ東京を離れ、瀬戸内海の離島へと移住。またフリーランスの地位向上と理想的なweb制作集団を構築するために、女性制作ギルド 秘密結社キユリアス(Qrious)を立ち上げるほか、地方創生や地域活性化、クリエイターの育成や再生、再起に注力し、現在3つのクリエイティブ・ギルドと1つの再生プロジェクトを運営。ボーラーハットがトレードマーク。現在は離島から東京へと戻り、新たなステージを構築中。

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